木皿 京子(きさら きょうこ)
Kyouko Kisara

新現美術協会50年史掲載(2000年12月刊行)

「私の中の時間」  

朝5時過ぎ、愛犬と一時間ほど散歩をします。青葉山の後の方、蕃山のふもとに住んで5年になります。 どことなく、ひっそりとしたこの環境がとても気に入っています。空の色、樹々を渡る風、鳥のさえずり、路端の草たち。今は何の色の感じかしら。こうして一日が始まります。

怠け者の私が、今もなお、絵を描いているのは何故?何も振り返りもせず今日に至ってしまいまし た。とても不思議です。 多分、落着きたくて、自分を取り戻したくて、絵を描いていたような気がします。夫の仕事の転勤でいろいろな都市へ12回も引越して参りました。 いつも道具を持ち歩き、新しい画材をみつけると使ってみたくて仕方ありません。ある時、引越する度絵が変わっているのに気が付き楽しくなり今度はどんな所か、荷物の整理もソコソコに真先に描いてみるのです。

水彩の自由でさわやかな、流動性のある、抽象で。真から楽しいと感じました。開放感です。でも、今はどうでしょう、7時間も8時間も画面とにらめっこ、前進できずにいます。 これからどう展開して行ったら良いのか、不安とよろこびの、紙一重のところをさまよう日々。絵が好きと思ったのは錯覚だったのかも知れません。日が昇り、今もまた、くるしみに魅了されているところです。

2000年9月

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