白井 潤治 (しらい じゅんじ)
Junzi Shirai

昭和37年 神奈川県に生まれる
東京造形大学彫刻科・同研究室修了
現在 常盤学園美術科教諭

石が好きだ。もっとつきつめて言うのならば"形"を件った石が静かに空間に浮かぶのが好きだ。そこは、誰も知らない自分だけの空間だからだ。それから水が好きだ。海は苦手だが水は好きだ。

石と水は科学的にはまるで無関係な物質だが、石を究極に深く深く追求すると、その実態は水だと心の中で考えている。毎回石を静かに形の中心に向かってつき詰めて行くと、ある時点から水が出てくる。水のまわりの風景が出てくる。水と風は似ている。水はその本質を変えずに転変してゆくものだからだ。風は物質であって物質ではない。空気中の諸元素が移動するだけのものではない。水と風は、その有り様が同じなのだ。風と水が織りなす景色は砂漠だろう。砂漠には広大な空間と乾燥しきった空間がありながら、その本質は風と水だろう。自分は製作を通じて、その景色を見ていたい。時には水があり、時には風が、又ある時には砂漠となりうる石の表情を見ていたい。石はその緻密な結晶のベールの最奥部に水の結晶を持っているはずだ。自分はその結晶の旅人なのだ。最近自分の名前の意味がやっと判った様に思う。潤いを治めるとは、うまく言ったものだ。

第51回新現美術協会記念展作品

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