新現美術協会50年史掲載(2000年12月刊行)
「色・形・テクスチュア」と言いますが、これを逆にするとちょうど僕が気にかけている順番になります。要するに触覚的なのです。例えば身の回りにある様々な物。とりわけ人工物は、その機能や役割がきちんとはたされている間は、あまり「物質」を感じさせないものです。ところがいったん壊れてしまうと、役割の中に納まっていた「物質」があらわとなり、その「存在感」までもがグッと増したように感じられるのです。このときのザラザラとした手触りや、一段と増した「存在感」に心引かれます。こうなると、色の多様さを押さえなければなりません。そうしないと触覚的な物質感がきわだたないからです。こうして、自分の触覚をたよりに求めるものは「リアル」。触覚的なそれ以上に皮膚感覚的な臨場感や切実感であり、「在るという感じ」なのです。
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