平 紀子 (たいら みちこ)
Michiko Taira

新現美術協会50年史掲載(2000年12月刊行)

小雨にけぶる森の中で朴の大木に出会う。美しい!なんというなめらかな樹肌、大きな葉の重なりの上に乳白色の大輪の花、何と香気な姿、この香気をいかに表現すべきか、そのものを描くよりもっと抽象化して出来ないか思考する。

28年住んだ仙台市中心部の我家も都市化でビルに囲まれた。私の生まれ育った岩沼町(今は岩沼市)は田舎で素朴な住み心地よい場所だった。コンクリートより木を求めて昨年蔵王山麓の小さな集落を見つけてアトリエを作る。

みちのく森の湖畔公園を過ぎて笹谷街道の松と桜の古木並木を通り、蔵王山に向かう。今冬は寒さが厳しく積雪が多く仲々通えなかったがそのぶん春の芽ぶき新緑は感激だった。

植物、小動物、小鳥との出会い、周囲の人々とのつながりもやさしくあたたかい。自然とはこんなに素晴らしい、これを絵筆に表現したい。芸術を愛する人達との交流も出来つつある。人生の中の出会いを大切にしたい。

これまでは人生の流れを日記風にその時その時に感じるままに描いてきたがあまり計画性のないものも多かったのでこれからはコンセプトをしっかり持って描きたい。

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